古井由吉さんと飲み、食べ、話す

littoral2007-10-31





日曜日の夕刻、中野の北アフリカ料理の店で、久しぶりに古井さんにお会いし、歓談する。5人で赤ワインを5本あけるが、半分以上を二人で飲む。

互いにそれとなく近況を話すうち、ともに入院話となる。「蝙蝠ではないけれど」*1に書かれた16年前の手術ほど大変ではなかったらしい。翌日にはもう歩いていたとか。肩の凝らない原稿から、執筆を再開されたようで、間もなく、連載も始められるようだ。

そしてこんな興味深い話を聞いた。黄昏と暁の一瞬が、相互に似た空を差しだすように、老年と幼児には、傾きは異なるものの、ある種の対称性があるという。とりわけそれまでに獲得した言語との関係において、崩れともいうべき事態が起こりうる。ちょうど幼児が、その崩れを逆向きに実践しながら、言語の獲得に向けて歩むように。

その崩れの様を、古井さんは書いてみたいという。すごいコトになってきた。あれだけの日本語の使い手が、その身体から言葉が剥がれてゆく様を書きながら見とどけるとは。

それから、12月の頭(しかし、やや酩酊していて不確かなので、要確認のこと)に、「K」で朗読会をやるという。お相手は、柄谷行人氏らしい。以前、いちど聞いているが、柄谷さんのねじれながらせりあがってゆく文は、じつに耳にとってパトスのような快感をもたらしてくれる。

*1:

陽気な夜まわり

陽気な夜まわり